ホイートストンブリッジ
学習指導要領: A-level (extension), Sek II
目的¶
ホイートストンブリッジをつり合わせ、零位法によって、3つの既知の抵抗から未知の抵抗を求めます。
原理¶
ホイートストンブリッジは、同じ電圧源につないだ2つの分圧回路でできています。上側の分圧回路では電流は \(R_1\)、次に \(R_2\) を流れ、下側の分圧回路では \(R_3\)、次に \(R_x\) を流れます。4つの抵抗はそれぞれブリッジの辺です。電圧源の「−」端子を基準にすると、上側の分圧回路の接続点の電位は \(U \cdot R_2 / (R_1 + R_2)\)、下側の接続点の電位は \(U \cdot R_x / (R_3 + R_x)\) です(実験ポテンショメータによる分圧を参照)。2つの接続点のあいだにつないだ電圧計はブリッジの対角線をなし、接続点どうしの電位差を示します。
2つの接続点が同じ電位のとき、ブリッジはつり合っています。電圧計はゼロを示し、対角線には電流が流れません。電位が等しいことは \(R_2 / (R_1 + R_2) = R_x / (R_3 + R_x)\) を意味します。両方の分数の逆数をとり、両辺から1を引くと、つり合いの条件 \(R_1 / R_2 = R_3 / R_x\) が得られるので、未知の抵抗は \(R_x = R_3 \cdot R_2 / R_1\) です。\(R_1 \cdot R_x = R_2 \cdot R_3\) と書くと、この条件は向かい合う辺の積が等しいことを表します。一方は \(R_1\) と \(R_x\)、もう一方は \(R_2\) と \(R_3\) です。
\(R_1\) と \(R_2\) は比例辺、\(R_3\) は可変辺です。学校の実験室では、\(R_3\) は抵抗箱です。オームの一の位、十の位、百の位、千の位にそれぞれ1つずつあるダイヤルで、精密な抵抗を選びます。比例辺は、ブリッジの測定範囲と分解能を決めます。\(R_1 / R_2\) = 10 のとき、\(R_3\) は \(R_x\) の10倍の値でつり合うので、1 Ω きざみの抵抗箱で \(R_x\) を10分の1オームまで求められます。\(R_1 / R_2\) = 1/10 のときは、同じ抵抗箱で、それ自身の範囲の10倍の抵抗を測れます。メートルブリッジでは、比例辺は一様な1本の抵抗線を滑り接点で分けた2つの部分です。抵抗線の抵抗は長さに比例するので、\(R_1 / R_2 = l_1 / l_2\)、\(R_x = R_3 \cdot l_2 / l_1\) となります。
示す値の符号から、\(R_3\) をどちらへ変えればよいかがわかります。電圧計の「+」端子を下側の接続点につないだ場合、\(R_3\) が小さすぎるあいだは、示す値は正になります。このとき下側の接続点の電位が上側より高いからです。\(R_3\) が大きすぎると、示す値は負になります。つり合いの点は、示す値の符号が逆になる2つの \(R_3\) の値のあいだにあります。半分に分けるたびに、つり合いの点をまだ含んでいる半分を残すので、区間は1回ごとに半分に縮まります。
つり合った状態で測るのは零位法です。計器の目盛りの誤差は問題になりません。ゼロを示しさえすればよいからです。計器の抵抗も問題になりません。電流が流れないからです。電圧源の電圧は、つり合いの条件から消えます。精度は、\(R_1\)、\(R_2\)、\(R_3\) の値がどれだけ正確にわかっているかと、計器がどれだけ小さな不つり合いを検出できるかで決まり、同じ不つり合いでも、電圧源の電圧が高いほど示す値は大きくなります。オームの法則 \(R = U / I\) による測定には2つの計器の目盛りの誤差が入り、しかも一方の計器は必ず \(R_x\) の分より多い値を示します。電圧計が電流計にかかる電圧まで含むか、電流計が電圧計に流れる電流まで含むかのどちらかです(実験電流計と電圧計のつなぎ方を参照)。ブリッジの検出器として昔から使われてきたのは、ゼロ点が中央にある検流計で、小さな電流を測る感度の高い計器です。私たちの実験装置では、マイクロボルトまで読める電圧計が同じ役目をします。
サミュエル・ハンター・クリスティーが1833年にこの回路を記述し、チャールズ・ホイートストンが1843年にそれを広く知らせました。ひずみゲージや抵抗温度計の回路では、今もブリッジが偏位法で使われています。ブリッジを基準の状態でつり合わせ、センサーを1つの辺とし、対角線の電圧がその抵抗の小さな変化に応じて変わります。
実験装置¶
「原理」の図は、実験装置の段と左右をそのまま保っています。同じ2つの段があり、「+」は左、「−」は右です。内部抵抗 0.5 Ω の 5 V の電圧源があり、その「+」は左のバスに、「−」は右のバスにつながっています。上側の分圧回路は上の段に沿っていて、「+」の側に \(R_1\) = 1 kΩ、「−」の側に \(R_2\) = 1 kΩ があります。下側の分圧回路は下の段に沿っていて、「+」の側に \(R_3\) = 1 kΩ、「−」の側に未知の抵抗 \(R_x\) があります。\(R_x\) には色の線がなく、選ぶとその値が表示されるので、手順4までは触れないでください。\(R_3\) は抵抗箱の役目をし、オーム単位で設定します。そのパラメータカードは kΩ で開くので、\(R_3\) を選ぶたびに単位リストで Ω を選びます。示す値が −2.5 V 付近なら、値が kΩ で入力されています。電圧計は対角線にあり、「+」端子は \(R_3\) と \(R_x\) のあいだのバスに、「−」端子は \(R_1\) と \(R_2\) のあいだのバスにつながっています。正の値は、画面には符号なしで表示されます。
手順¶
- 電圧計の示す値とその符号を記録します。
- \(R_3\) を 2000 Ω にし、示す値とその符号を記録します。
- 1000 Ω と 2000 Ω での示す値の符号が逆なら、つり合いの点はそのあいだにあります。\(R_3\) を区間の中央の値にし、両端の示す値の符号が逆になる半分を残します。1 Ω 単位に丸めながら、両端の差が 1 Ω になるまでくり返し、\(R_3\) の各値とその示す値を表に記録します。示す値がゼロに近いほうの \(R_3\) の値を記録します。
- \(R_x = R_3 \cdot R_2 / R_1\) を計算します。\(R_x\) を選んでその公称値を読み、結果と比べます。
- \(R_3\) をつり合いの値にしたまま、電圧源の電圧を 10 V に上げ、示す値を記録します。次に \(R_3\) をつり合いの値より 1 Ω 大きくし、示す値を手順3の 5 V のときの値と比べます。\(R_3\) をつり合いの値に、電圧源を 5 V に戻します。
- \(R_1\) を 2 kΩ にします。手順4で求めた \(R_x\) から、いまブリッジをつり合わせる \(R_3\) の値を予想します。\(R_3\) を予想した値にし、その 1 Ω 上と 1 Ω 下で示す値の符号が逆になることを確かめます。
予想される結果
\(R_3\) = 1000 Ω のとき、電圧計は約 227 mV を示し、これは正の値です。2000 Ω では約 −625 mV を示します。\(R_3\) がつり合いの点を越えたのです。区間を半分に分けていくと、1500 Ω で −278 mV、1250 Ω で −51 mV、1125 Ω で 81 mV となり、10回ほど設定すると 1200 Ω と 1201 Ω のあいだに行き着きます。示す値は 1200 Ω で約 18 µV、1201 Ω で −1.02 mV なので、\(R_3\) = 1200 Ω、\(R_x\) = 1200 × 1000 / 1000 = 1200 Ω となり、\(R_x\) の公称値と一致します。示す値がちょうどゼロにならないのは、1本約 0.02 Ω のケーブルが各辺に不均等に加わるからです。
10 V でもブリッジはつり合ったままで、両方の接続点が 5.0 V まで上がっているのに、示す値は約 36 µV です。1201 Ω では約 −2.05 mV で、5 V のときの −1.02 mV の2倍です。つり合いの点は動きませんが、電圧源の電圧が高いほどゼロの検出が鋭くなります。
\(R_1\) = 2 kΩ では、予想どおり \(R_3\) = \(R_x \cdot R_1 / R_2\) = 2400 Ω でブリッジがつり合います。\(R_x\) = 2400 × 1000 / 2000 = 1200 Ω です。示す値は 2399 Ω で約 0.46 mV、2401 Ω で約 −0.46 mV です。\(R_3\) の 1 Ω の変化はいまは \(R_x\) の 0.5 Ω にあたるので、同じ抵抗箱で \(R_x\) を2倍細かく測れます。
問題¶
- 分圧の式から \(R_3\) = 1000 Ω と 2000 Ω のときの電圧計の示す値を計算し、手順1と手順2の値と比べてください。
- 手順3の最後の 1 Ω の区間の両端での示す値から、示す値がゼロになる \(R_3\) の値を、線形補間によって10分の1オームまで求めてください。実際のブリッジの \(R_1\)、\(R_2\)、\(R_3\) の許容差がそれぞれ 0.1% のとき、\(R_x\) の不確かさはいくらですか。
- \(R_x\) はひずみゲージで、ブリッジは手順3の終わりのようにつり合っています。ゲージが引き伸ばされ、その抵抗が 1 Ω 増えます。電圧計は何を示しますか。また、ひずみゲージの回路で、ゲージだけに電圧計をつなぐのではなくブリッジを使うのはなぜですか。
解答
- 上側の接続点の電位は、\(R_3\) によらず 5 V × 1000 / 2000 = 2.500 V です。\(R_3\) = 1000 Ω のとき、下側の接続点の電位は 5 V × 1200 / 2200 ≈ 2.727 V で、電圧計は 2.727 − 2.500 ≈ 0.227 V を示します。2000 Ω では、下側の接続点の電位は 5 V × 1200 / 3200 = 1.875 V で、示す値は 1.875 − 2.500 = −0.625 V です。計算値と示す値の差は 1 mV 未満です。この差はおもに電圧源の 0.5 Ω の内部抵抗によるもので、電圧計の 10 MΩ とケーブルの影響はそれより小さくなります。
- 示す値は 1200 Ω で約 18 µV、1201 Ω で −1.02 mV なので、1 Ω あたり約 1.04 mV 下がります。ゼロは 1200 Ω から 1201 Ω へ 0.018 / 1.04 ≈ 0.02 だけ進んだところ、\(R_3\) ≈ 1200.0 Ω にあります。計器は抵抗箱の1きざみよりも十分細かくゼロの位置を決められるので、結果を制限するのは 1 Ω のきざみです。1200 Ω に対する 1 Ω は 0.1% 未満です。実際のブリッジでは、\(R_3 \cdot R_2 / R_1\) で3つの抵抗の百分率の不確かさが足し合わされ、\(R_x\) の不確かさは 0.3% に達することがあります。
- つり合いの近くでは、変化 \(\Delta R_x\) によって示す値は \(U \cdot R_3 / (R_3 + R_x)^2 \cdot \Delta R_x\) だけ変わります。5 V × 1200 / 2400² × 1 Ω ≈ 1.04 mV で、正の値です。ゲージだけに電圧計をつなぐと、同じ 1 Ω は約 2.5 V の電圧を約 1 mV 変えるだけで、それを読むには、示す値の 0.04% を分解できる計器と、それほどもドリフトしない電圧源が必要になります。ブリッジは一定の 2.5 V を差し引きます。変化はゼロから始まるので感度の高い測定範囲で表示でき、電圧源の電圧がドリフトしてもゼロは動きません。