エミッタ接地増幅回路
学習指導要領: Sek II, A-level (Electronics), electronics courses
目的¶
トランジスタの増幅段を組み立て、その動作点と電圧増幅度を求めます。
実験装置¶
9 V の電圧源は、コレクタには 2.2 kΩ の抵抗を、ベースには 470 kΩ のバイアス抵抗を通して NPN トランジスタ(\(\beta\) = 100)に電力を供給し、エミッタは 470 Ω の抵抗を通して共通線につながっています。交流電圧源(正弦波、振幅 0.2 V、1 kHz)が、10 µF のコンデンサを通してベースに信号を加えます。オシロスコープは CH1 に交流電圧源の出力(100 mV/div)、CH2 にコレクタ(500 mV/div、AC結合)をつなぎ、0.5 ms/div です。
手順¶
- 実験を開いたら2〜3秒待ちます。コンデンサが充電され、動作点が落ち着きます。2つの波形について、入力とコレクタでの信号のピークツーピーク値と位相を比べます。
- 電圧増幅度、つまりコレクタでのピークツーピーク値と入力でのピークツーピーク値の比を求めます。
- CH2 でDC結合と 2 V/div を選び、コレクタの直流電圧を見積もります。
- 交流電圧源の振幅を 1 V に上げ、CH1 を 0.5 V/div に切り替えます。
- エミッタ抵抗のパラメータカードで 470 Ω を 220 Ω に変え、交流電圧源の振幅を 0.2 V に戻します。
予想される結果
コレクタの信号は入力より大きく、入力と逆位相です。ピークツーピークで約 1.8 V に対して入力は 0.4 V で、増幅度は約 4.5 です。これはコレクタ抵抗とエミッタ抵抗の比 2.2 kΩ / 470 Ω に近い値です。コレクタの直流電圧は約 5.4 V です。計算ではコレクタ電流は約 1.6 mA、エミッタの電圧は約 0.77 V ですが、実験装置にはこれらの値は表示されません。振幅 1 V では出力の正弦波がクリップされます。上側ではトランジスタが遮断し、下側ではエミッタの電圧の近くでトランジスタが飽和します。220 Ω のエミッタ抵抗では増幅度はおよそ2倍になり、動作点は移動します。バイアス抵抗が1本だけだとベース電流が決まり、コレクタ電流はその \(\beta\) 倍になるので、動作点は \(\beta\) に左右されます。同じ型の実際のトランジスタでも、\(\beta\) は 100 から 300 までまちまちです。トランジスタのパラメータカードで「電流増幅率 β」を 300 にします。するとバイアスが求めるコレクタ電流は約 4 mA になり、2.2 kΩ と 470 Ω の抵抗が流せる電流を超えるので、トランジスタは約 3.3 mA で飽和します。信号がないとき、コレクタの電圧は約 1.7 V で、エミッタよりわずか 0.2 V 高いだけです。0.2 V の信号でもすでに下側の半波がクリップされ、コレクタ電圧の平均は約 2.7 V になります。そのため実際の増幅回路では、2本の抵抗でつくった分圧回路でベースにバイアスをかけます。
問題¶
- 出力信号が入力と逆位相になるのはなぜですか。
- 交流電圧源とベースのあいだにコンデンサが必要なのはなぜですか。
- 2倍の 4.4 kΩ のコレクタ抵抗を使うだけでは、増幅度を2倍にできないのはなぜですか。動作点はどこに移りますか。
解答
- 入力電圧が上がるとベース電流とコレクタ電流が増え、2.2 kΩ のコレクタ抵抗での電圧降下も大きくなります。コレクタ電圧は 9 V からこの電圧降下を引いたものなので、入力が上がるとコレクタ電圧は下がります。
- コンデンサは 1 kHz の信号を通し(そのリアクタンスは約 16 Ω にすぎません)、直流を通しません。交流電圧源のもう一方の端子は共通線につながっているので、コンデンサがないと、交流電圧源は自身の小さな抵抗を通してベースを 0 V 付近に保ってしまいます。470 kΩ の抵抗によるバイアスが失われ、0.2 V の信号ではトランジスタを導通させるには小さすぎるので、トランジスタはオフのままになります。
- コレクタ電流はベース電流で決まって約 1.6 mA のままなので、4.4 kΩ の抵抗では約 1.6 mA · 4.4 kΩ ≈ 7.0 V の電圧降下が生じ、コレクタは約 2 V、エミッタよりわずか約 1.2 V 高い電圧になります。動作点は飽和の近くに移ります。出力はピークツーピークで約 3.6 V になり、その下に残された余裕に収まらず、0.2 V の入力ですでに下側の半波がクリップされます。